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シルバー(ETF)投資で年間10%超のインカムゲインを得る方法とは?!

守屋史章(オプショントレード普及協会)

分配金のないシルバーETF(SLV)のインカムゲイン投資法

シルバーETFは実物資産である銀をそのETF組成の裏付けとして保有している。実物資産である銀が無価値になることはないだろう。需給により値下がりすることはあっても、0にはならない。インフレにも強いはずだ。ただ、シルバーは、ゴールドに遅れをとっている。

【図表1】2022年3月以降のゴールドETF(IAU赤)とシルバーETF(SLV青)比較

出所:TradingView

しかも貴金属を保有していてもインカムは無いから、シルバー投資に妙味がないと思っている投資家も多いかもしれない。しかし、なかなか上がってこないからこそうってつけの投資方法がある。そう、キャピタルゲインに期待がもてないならば、カバードコールの出番である。

まず、簡単にコールの説明をしよう。例えば、ある株がこれから上昇しそうだ、と思ってはいるが、今すぐにお金を用意できないとき、ひとまず手付けをうつことができる制度が株式市場にもある。予想通り株価が上昇したら、上昇する前の約束の価格で株の売買契約に進む。予想に反し株価が下がってしまった場合は、手付けを放棄しその株を買わなくてよい。

このような手付けの制度を、証券市場ではコールと呼ぶ。コールは、「買うこと、買い戻すこと」を意味する言葉。人を呼んで自分の元にものを持ってきてもらうイメージだ。手付金を払う側は、お金を払ってこの虫のいい権利を手にする。オプション的にはこれを「コールを買う」と表現する。逆に、手付金をもらう側は、一定期間拘束され、株式を決められた価格で売却する義務を負担する。これは「コールを売る」と表現する。この手付金制度を利用すれば、手付金をもらって後で売るという戦略が取れるのだ。

つまり、大きく儲からなくていい、安定的なキャッシュフローがあればそれで充分、という投資判断により、株を買って、誰かの手付けに応じて手付金をもらい、満期(手付けを行使される日)に相手方から手付けの行使をうけて株を売却しておしまい、という投資手法である。

株を買って株価の上昇益を取りに行くというモデルから、確定的な手付金をもらうために株を買う、というモデルへの転換だ。このように、自分の保有する株のコールを売ることを、オプション的には「カバードコール戦略」(略してカバコ)という。

コールを売ること自体は、株を持っていなくても可能である(ウィブル証券ではリスクの観点から株を持たないで行うコール売りはできない)。しかし、買い手が権利行使をすれば株を渡さなければならない。株価が急騰している場合、市場から高い価格で株を買ってきて、相手方に安い価格で売ることになるから、大きな損失が出る可能性がある。

株を持たない状態でのコールの売りは気を付けなければならない。一方、自分が持っている株のコールを売る分には、最終的に株価が上昇していくらになろうとも、持っている株を相手に渡せばよいわけで、株の調達リスクは保有株で完全にカバーされている。だから、米国のオプション取引でも、カバコは最も低いリスクレベルに位置付けられている。

このカバコがシルバーETFでも可能なのである。シルバーの上昇ではなく、シルバーETFオプションのコールのプレミアムをいただく作戦だ。

シルバーETFの残存日数1年のコールは、現在の株価に対して例年10%程度の価格がついている。つまり初年のキャッシュフローは株価(当初投下資金)の10%近い数字になるということだ(ここでは税金・手数料・為替を考慮していない)。2025年1月17日時点の1年物(2026年1月16日満期)のC28は3.5米ドル(以下「ドル」)前後で売ることが可能だ。このときのETF価格は27.61ドルに対して12.5%ということになる(図表2参照)。

【図表2】2025年1月17日時点の2026年1月16日満期のSLVオプション価格表

出所:marketchameleon

シルバーETFを買って大きな値上がり益を狙うという株式投資の発想から脱却して、買って、1年後に同値で売る約束をする(手付けに応じる=コールを売る)」ことで、1年間ほったらかしでも投資した資金の10%を超えるキャッシュフローを手に入れることができる可能性がある。

オプションの流動性も抜群のシルバーETFであるSLVでカバードコールをやってみよう。図表3を見ながら読み進めてほしい。

【図表3】2024年1月19日時点の2025年1月17日満期のSLVオプション価格表

出所:marketchameleon

まず、2024年1月19日に20.67ドル(図表3参照)のSLVを100株買うことにする(米国株でオプションを利用する場合、オプション1単位は100株相当なので、最低100株からになる)。2,067ドルの投資だ(当時の為替レート1ドル約148円で計算すると約30万円程度で手掛けられる)。

なぜ1月スタートかというと、長期オプションの満期は基本的に毎年1月の第3金曜日にのみに設定されていることが多いからだ。1月に仕込めば、ちょうど1年間ほったらかしの投資ができる。なお、満期が固定されているだけなので、いつでもエントリーは可能だ。ただ満期までの期間が短くなればもらえるオプション料は少なくなる。

すなわち2月に始めても翌年2月満期のオプションがないため翌年1月満期を選ぶことになるので、この場合は11ヶ月の投資期間となり1年分のオプションプレミアムはもらえない。そして21ドルで買いたいという人の手付けの申し出を受け入れ、ちょうど1年先の2025年1月17日まで21ドルで売却する義務を負担する。

図表3によれば、この時、将来21ドルで買いたい人が払う手付金相場は2.41ドル(買い気配)だったので、手付けに応じれば100株相当の241ドルを得ることになる。投資資金20.67ドルに対するキャッシュフローは11.7%だ。

ここで、ウィブル証券を利用してこのカバードコール戦略を行うメリットを説明しよう。ウィブル証券においてカバードコールを発注する際には、「株式100株買い+コール売り」を一括して注文でき、両方とも同時に約定する(同時約定しない場合はすべて約定しない)。そしてコールを売ることで得られる金額を株式購入代金に充当できるため、本事例では1,826ドル(=(20.67ドル-2.41ドル)×100株)でカバードコールのポジションを持てるのである(図表4参照)。

1,826ドルの投資でキャッシュフロー241ドルを獲得すると考えれば年13.2%のキャッシュフローだ。また、満期にSLVが21ドルを超えていたら(わずか年1.6%の上昇率で)満期には資産が2,100ドルになっている(21ドルで売却するので)ので、1,826ドルの投資で274ドルを得る計算だ。何と年15%のリターンということになる。

株とカバードコール売りをセット注文可能できるのは注文に便利なだけでなく、資金効率の面でも優れているのだ(なお、筆者としては、発注の際の価格がデフォルトで中値になっているのも使いやすいと感じている)。

【図表4】ウィブル証券カバードコール発注画面

出所:ウィブル証券スマホ発注ツールのスクリーンショット

なお、米国の株オプションでコールを売った場合は、いつでも権利行使される可能性がある。しかし心配は無用。権利行使されれば、満期をまたずにただ株を売却するだけ。手付金を返す必要はない。リスクをとっている期間が短くなるので、期間利回りを年換算すればむしろ良い成績になる。株を売却した後は、キャッシュポジション(株を持っていない状態)に戻るから、またSLVを買ってコールオプションを売ればよい。

この戦略の問題はSLVが下落した場合だ。SLVを保有しているから、買った時点よりも価格が下がれば、当然含み損を抱える。これは株式投資と同じだ。ただ、この戦略ではコール(手付金)を売っているので、満期の時点で21ドルを超えていなければ、コールは放棄される。つまり何も起こらない。

結局、価格が下がった場合も当然ながら受け取った手付金を返す必要はない。これにより、受け取っていたコールの代金の分が利益となる。つまり、SLVだけを持っていた場合よりも受け取っていたコールの分だけ資産の目減りが小さくなる。

もっとも、この場合、オプション取引としては利益が出たことになるので、その利益は雑所得として課税される。SLVを損切りして損失を確定させても、現行の制度では株式の損益とオプションの損益の課税区分が異なるため、オプションの利益と株式の損失を通算できない。全体で見たら損失状態にもかかわらず、オプションの利益は雑所得として課税されてしまう点は注意が必要だ。

なお、SLV価格が上昇してコールの義務として(手付けの行使をうけて)SLVを売却した場合も、手付金を返す必要はないわけで、このオプション料が利益になる。ただ、この場合、コールは株式の売買の道具として使われたから、オプションの損益は株式の譲渡損益に含めて計算することになっている。

売っていたコールの権利行使価格をSLVが下回って満期を迎え、そのコールが無価値になったら、手元にはSLV100株が残る。そうしたらまた1年後の満期のコールを売る。ただ、価格が下がっている場合、1年目よりも翌年は手付金も下がることが多い。

価格が上昇するかヨコヨコの値動きであれば翌年も同じようなキャッシュフローを期待できる可能性があるが、価格が下がった場合は前年のキャッシュフローほどは期待できない点には留意が必要だ。さて、このSLVのバードコールの結果を見てみよう。

【図表5】SLVチャート

出所:TradingView

2025年1月17日の株価終値は27.61ドルだったので、C21の義務としてSLVを21ドルで100株売却してこのカバードコール戦略は成功に終わった。当初の予定通り、1,826ドルの投資(ウィブル証券でカバードコールをセット注文した場合の投資額)で、274ドル((21.00ドル-18.26ドル)×100)を得ることができたわけだ(リターン15.0%)。

現在はリスクを取っていないキャッシュポジションとなった。さあ、翌年に向けて再度SLVインカムゲイン投資を仕掛けようではないか。

【図表6】2025年1月17日時点の2026年1月16日満期のSLVオプション価格表

出所:marketchameleon

2025年1月17日時点で再度SLVカバードコールを仕掛けるならば、SLVを27.61ドルで100株買って、1年先のC28を3.50ドル程度で売ることになるだろう(SLV価格に対するキャッシュフロー率は12.7%)。ウィブル証券のセット注文ならば2,411ドルで買えることになる。満期に28ドルを超えていれば(わずか1.4%の上昇率で)、2,800ドルになる計算だ。つまり2,411ドルの投資で389ドルを得ることになる。年16.1%ということだ。

株式会社M&F Asset Architect

(オプショントレード普及協会)

代表取締役 守屋史章

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