守屋史章(オプショントレード普及協会)
株価の上昇を期待しコールオプションを買った後、その予想があたり株価が上昇した後で、別のコールオプションを売ることで、コール買いにかかった費用を回収し、さらに利益を伸ばす、そんな方法がある。
いわゆるブルコールスプレッドの買いと売りを同時に仕掛けるのではなく、買いの初動に成功した後で、売りを入れて、フリートレード化し(損にはならない状態を作り出し)、その時点で利食いするよりもさらに利益を伸ばす作戦だ。
初動に成功しているということはその時点で利食いしてもよいのだが、もう少し利を伸ばしたいという場合もあるだろう、しかし欲をかいて結局は損になってしまい、あのとき利食っておけばよかった、と後悔したことのある投資家も多いのではないか。
そこで一旦フリートレード化して、損にはならないことを確定させて、さらなる利益を追求することができればどうか。損しないことが確定していれば、大胆に相場を張れるのではないだろうか(恐る恐る相場を張ってもいいことはない)。そのような作戦である。
本コラムでは、フリートレードの実例とそのポジションの取引の仕方について解説する。
【図表1】エヌビディア(シンボル=NVDA)週足チャート

出所:Webull desktop
2025年4月。米国トランプ大統領の関税政策により、株式市場に激震が走りエヌビディアも100ドルを割り込んだあのとき、株を買うのではなく(∵更なる下落はご免だから)、まずはFOTMコール(ファーアウトオブザマネー=現在の株価水準から相当高い権利行使価格のオプションのこと)を買ってみることにする。
【図表2】NVDA オプション価格表(2025年10月17日満期) 2025年4月8日引け前

出所:marketchameleon
図表2はオプション価格表である。2025年4月8日引け直前、株価96.24米ドル(以下「ドル」と表記)のとき、約半年後の2025年10月17日満期、権利行使価格は150ドルのコールオプションにしよう。2.68ドル(中値:買い気配Bid2.71ドル‐売り気配Ask2.71ドル)の支払いだ(実際には1枚あたり100株相当を取引するので100倍の268ドルを支払う)。
このときエヌビディアの株を100株購入するには96.24ドル×100=9,624ドルの資金が必要だ。しかしC150であればわずか268ドルでたりる。もちろん、利益になるためには現在の株価から50%以上の上昇率が必要であり、たとえ今から株価が50ドル上がっても利益にはならない。
それでもなぜオプションを買うのか。それは株式の場合はさらなる大きな下げに対しては損切りで対応するほかなく、実は損切りも大変難しい投資行為なのに対し(損切りして再度上がっていくところについていくのは難しく、ただ損を確定させただけということになる)、コールオプションの買いであれば、損失が限定していて、その額が事前に把握できるため、その損失を許容できるのであれば、多少の下落に一喜一憂することなく、ポジションを維持できるからである。
しかもオプション取引ではさらに面白いことができる。オプションを売ることで、お金をもらうこともできるのである。当初、268ドルを支払ったわけだから、これをオプションを売ることで回収できる、というわけだ。
【図表3】エヌビディア(シンボル=NVDA)週足チャート

出所:Webull desktop
5月に入り、市場はある程度の落ち着きを取りもどしてきた。エヌビディアも5月23日には株価131.40ドルまで回復。図表4はこの時点におけるオプション価格表である。
【図表4】NVDA オプション価格表(2025年10月17日満期) 2025年5月23日引け前

出所:marketchameleon
初動に成功し、確かに株価は上昇、C150もいまだアウトオブザマネー(OTM)ではあるものの、9.45ドル(買い気配9.4ドルと売り気配9.5ドルの中値)まで上昇した。ここで、C150を売却(利食い)してももちろんよい。2.86ドルで買ったものが9.45ドルに値上がりしたところで売却すれば、このC150のキャピタルゲイン6.59ドル(実際は1枚あたり100倍の659ドル)の利益を得られる。
しかし、まだまだ満期までも時間があり、さらに株価は上がりそうだ。一方でこのあとあまり上がらず、150ドルを超えられなければ、今出ている利益どころか、当初支払った286ドルを失うことになる。欲をかきすぎるのもよくないが、リスクを取らなければリターンもない。さあ、どうするか。
そこで、別のコールオプションを売り、支払った286ドルを回収しつつ、現時点で得られる以上の利益(659ドル以上の利益)を追求することを考えよう(フリートレード)。
図表4を再度見てほしい。現在よりも50ドルも上の権利行使価格180ドルが中値3.55ドルで売れるではないか。ここでC180を売れば、3.55ドルを受け取れるということは、C150に支払った286ドルを回収し、何があっても69ドルの利益は確保できることを意味する。
株価が150ドルを割って終わった場合、C150もC180も0ドルだが、このときC150は286ドルの損失、C180は355ドルの利益となり、差額の69ドルが利益となるわけだ。株価が180ドルを超えた場合、売っているC180からは損失が出始めるが、買っているC150がC180の損失のすべてをカバーするため、利益は一定になるものの損失になることはない。これを示しているのが図表5だ。
【図表5】時間差で組んだC150-C180満期損益図

出所:marketchameleon
株価が150ドルを割り込んでも69ドルの利益は確保されている。一方、180ドルを超えてくると利益は一定ではあるものの、今、利食いした場合の利益659ドルに対し、3,069ドルまで利益を伸ばせる可能性があるわけだ。
一般にブルコールスプレッドは同時に組成した場合はデビット(支払い)のポジションになるため、最大利益の計算方法は、二つの権利行使価格の差である30ドルから支払額を引く形になる。しかし、上記のように、初動に成功し、時間差で買いの支払額よりも高く売れれば受け取りのポジションになり(フリートレード完成)、最大利益が3,000ドルに69ドルを加えた3,069ドルになる。
ここで、ウィブル証券では、これをどのように取引すればよいか見てみよう。C150はすでに持っているので、C180を普通に売ればよいように思うが、実際にはそれではだめだ。システム上、C180のネイキッド売り(原資産株もコール買いもない状態でのコール売り)とみなされるからだ。
ウィブル証券に限らず、コールの売りをネイキッドで許可する証券会社は少ない。株価は、理論上は青天井だからだ。すなわち、コール売りは権利行使を受ければ、株を売却しなければならないが、株もコールも保有していない場合、市場から時価で調達して相手方に売却しなければならないところ、株価がとんでもない価格にまで上がっていた場合、投資家は調達できず(株を買う資金が無く)破綻してしまう危険があるからだ。
株を持っていれば持っている株を売ればよいのだし、コールを持っていればその権利行使価格で株を調達できるのであるから、時価で調達しなければならないというリスクはない(ということで、多くの証券会社が、株式を保有している状態でのみコール売り=カバードコールを許可している)。
しかし、ウィブル証券ではコールの買い玉を持っていれば、同じ原資産のコール売りを認めてくれる。C180の売りを、C150の買い玉に紐づけることができるのだ。紐づけないでC180売りを注文すると拒絶されてしまう。
C150をすでに保有している状態で、C180を売るには、「レッグイン」という機能を使う。オプションではポジションのことを「レッグ」とよぶことがあり、新しいポジション(レッグ)を既存の保有ポジションに追加(イン)することから「レッグイン」とよんでいる。
通常は、オプション価格表からC180を探してその売り注文をだすが、レッグインの場合は、持っているC150のポジションの方から入っていく。スマホアプリでやってみよう。まずC150のポジションを開く。右下の赤枠をクリックし、「ストラテジーの構築」に進む。
【図表6 スマホアプリのスクリーンショット(一部筆者修正)】


「戦略を作成する」のモードに入り、「売付、Callでバーティカルを作成」により10月17日満期のC180を選択して発注すれば、C150の買いに紐づいた形でC180の売りが入る。これでC150-C180ブルコールスプレッドポジションが完成した。
【図表6】エヌビディア(シンボル=NVDA)週足チャート

出所:Webull desktop
では結果を見てみよう。実際に満期において株価は183.22ドルで着地、C150、C180ともITM(インザマネー)で終わった。このように、コールスプレッドの両方がITMで終わった場合、C150買い玉の自動権利行使によりエヌビディア株を100株購入し、C180売りの自動割り当てによりその100株を売却する手続きが同時に行われる結果、特に何もしなくても、3,000ドルが入金される(受取69ドルとあわせて3,069ドルの利益)。
なお、仮にC180がOTMで着地するような場合には気をつけなければならない。例えば株価が170ドルあたりで満期を迎えそうな場合だ。このときC150は自動権利行使となるが、これには150ドル×100株=15,000ドルの資金が必要になる。
この資金が用意できない場合には、権利行使できないため、満期直前に強制的に決済される可能性がある。そうするとC180だけが残るため、このC180も強制決済の対象になる。両方とも深いITMでなければ、満期までに(厳密には引け前1時間~30分前程度)、自身でスプレッドポジションの全体を反対売買(決済)するべきである。
株式会社M&F Asset Architect
(オプショントレード普及協会)
代表取締役 守屋史章