決算期には、株価は通常より大きく動きます。決算期にオプション取引を行おうとする投資家にとって、決算発表シーズンに特有なインプライド・ボラティリティ(IV)の変動パターンを理解しておくことが重要です。

他の投資商品や資産と同様に、各オプションのプレミアム(オプション価格)は、需要と供給のダイナミクスによって決定されます。供給に比べて需要が多いと、プレミアムは上昇し、インプライド・ボラティリティも上昇します。逆に、供給に比べて需要が少ないと、プレミアムは下落し、インプライド・ボラティリティも急落します。
投資家やトレーダーは決算発表前に、インプライド・ボラティリティを利用して、市場の期待値を測り、取引判断を行います。ほとんどの場合、決算発表前は不確実性が高まり、トレーダーは決算発表を見越してポジションを取り始めるため、インプライド・ボラティリティは上昇する傾向があります。このような期待から生じるオプションの需要増は、プレミアムを押し上げる可能性があり、それがまた、インプライド・ボラティリティの上昇につながります。

例えば、ある株を保有している投資家がその株の決算発表が期待外れで株価下落の可能性があると予想している場合、ポートフォリオを潜在的な損失から守るため、つまり、ヘッジをかけようとして、決算発表前にプットを購入することがあります。
また、投機的なトレーダーは、弱気の見通しを持っている場合にプットを購入することもあります。ヘッジ目的と投機目的の両方に見られるオプション需要の増加により、決算発表シーズン中にインプライド・ボラティリティは上昇します。
一般に、決算発表後には、不確実性が薄れて市場が実際の決算に反応した結果、インプライド・ボラティリティのレベルは低下します。特に、インプライド・ボラティリティの急落は、インプライド・ボラティリティ・クラッシュ(IVクラッシュ)と呼ばれ、オプション価値の急落につながります。
IVクラッシュは、オプションの売り手にとって有益です。なぜなら、売ったオプションの価格が下落したら、売り手はそれを買い戻して利益を確定できるからです。逆に、オプション価格の下落は、オプションの買い手にとって不利です。場合によっては、オプションの買い手は、価格の変動を正しく予想したとしても、大きな損失を被る可能性があります。
以下のアップル(AAPL)のチャートは、四半期決算発表とインプライド・ボラティリティの動きを示しています。灰色の帯のところをご覧ください。決算発表後に、インプライド・ボラティリティがいかに下落したかがわかるでしょう。

IVクラッシュのパターンを考えると、オプションの買い手は取引の前に、インプライド・ボラティリティのレベルをしっかり注視しておく必要があります。もちろん、たとえ信頼性が高いパターンであっても必ず実現するとは限らず、将来の出来事に確実性など存在しません。いずれにせよ、インプライド・ボラティリティは、数多くあるオプション価格決定要素の1つにすぎません。情報を十分に集めた上で判断をするなら、市場環境全体についても、もちろん考慮する必要があります。
インプライド・ボラティリティの絶対値だけでは、現在のレベルが高いか、低いかを判断することはできません。例えば、昨年1年間、インプライド・ボラティリティが80%~200%の範囲で推移していたのなら、現在のインプライド・ボラティリティが80%であれば、それは非常に低いことになります。しかし、昨年のインプライド・ボラティリティが10%~40%で推移していた場合、現在が40%であっても、それは非常に高いレベルと言えます。
現在のインプライド・ボラティリティのレベルを読み取るには、IVランクとIVパーセンタイルを理解することが重要です。この2つの指標は、過去1年間など一定期間のインプライド・ボラティリティに対し、現在のインプライド・ボラティリティがどの程度のレベルにあるかを示す指標になります。

インプライド・ボラティリティは、決算発表の前後で大きく変動し、オプション取引に大きな影響を与えます。オプション取引を行う際は、ボラティリティのレベルの変動に関する情報を集め、それを十分に分析した上で取引判断を行うことが必要です。