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主流は“人型ロボット”ではなく「単機能」。ロボティクス・ドローンの最前線

日本がふたたびトップを走るには

(※本記事は2022年12月20日に「東証マネ部!」で公開された記事の転載です)‌

未来の市場を盛り上げそうなトレンドについて深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。ロボティクス・ドローン編の1回目となる本記事では、この分野の現在の動向や、日本の立ち位置について考えたい。

かつて数々の映画やアニメ作品で、人型ロボットが描かれてきた。そうして時代を重ねる中で、ロボットやそれにまつわるテクノロジーは発展を見せている。ただし、発展の中心にいるのは人型ロボットではない。むしろ近年のトレンドは「単機能ロボット」だという。

こうした実情を教えてくれたのは、著書に『ロボット―それは人類の敵か、味方か 日本復活のカギを握る、ロボティクスのすべて』(ダイヤモンド社)がある和歌山大学 システム工学部システム工学科教授の中嶋秀朗氏。ロボティクスの最前線、そしてその未来図とはどんなものなのだろうか。

単機能ロボットが広がった理由。抜け出したのはドローン

AIの進化とともに、ロボティクス分野がにわかに注目を集めている。ロボティクスとは、中嶋氏の言葉を借りれば「ロボットに関するテクノロジー」を指す。ロボットそのものはもちろん、ロボットに使われるモーターやセンサー、制御装置なども含まれる。

「これまでロボットといえば、工場などで使う産業用ロボットが中心でしたが、今後期待されているのはサービスロボットです。たとえば介護やものを運ぶロボット、あるいは全日空(ANA)が遠隔からアバター旅行を楽しむサービスを開発していますが、ここに使われているのも、遠隔操作のサービスロボットといえます」

こうしたロボットは、かつて夢見たような、いわゆる人型ロボットではない。人型ロボットは、さまざまな機能を含んだ「多機能ロボット」だが、現在主流になっているのは「単機能ロボット」だという。

「かつては多機能ロボットを開発し、産業に使おうという流れがありましたが、蓋を開けてみると現実的な技術として限界がある。そこで、ロボットに万能を求めるのではなく、そもそもロボットに何をしてもらいたいかを冷静に分析し、そのニーズに応えるロボット、機能を絞った単機能ロボットの開発に向かい始めました。それがここ5年ほどのトレンドです」

機能を絞ったロボットとして、すでに光が当たり始めているのが自動宅配ロボットだ。配達員に代わり、ロボットが自律走行で配達する。以前、東証マネ部!の記事でも紹介した。

そしてもう1つ、著しい普及を見せているのがドローンだ。「ロボットとは、広く言えば自動で何かの作業を行う機械であり、ドローンもその概念に含まれます」と中嶋氏。ドローンは近年、上空からの計測や危険な高所の撮影、あるいは農薬散布など、さまざまなシーンで活用されている。

「ドローンがこれほど急速に普及したのは、まず『ニーズ』が高いこと。人間ができない、あるいは危険な作業を代替できますから。そしてもう1つ重要なのは、ビジネスとしての『競争力』があることです。つまり、同じことを人間がやるよりもコストが掛からない場合が多いのです」

一方、ロボットの活用が期待されながら、ドローンなどに比べると「まだ普及が進んでいない」と中嶋氏が話すのは介護の領域だ。

「介護ロボットはニーズが強いものの、競争力はまだ弱いのが現状。人が作業するよりも、コストが大幅に掛かってしまいます。また、介護は人を相手にするので、毎回の作業の環境や条件、状態が細かく変わるのもポイント。それに対応できるロボットを作るハードルも高いのです」

ロボット大国・日本のイマ。未来のカギになるキーワードは

ロボティクスの分野において、日本の立ち位置はどんなものなのか。たとえば産業用ロボットの製造台数や稼働台数を考えると「日本は世界のトップ3に入っている」と中嶋氏。そして「日本はかつて“ロボット大国”と言われるなど、この分野のトップを走ってきた国」だと付け加える。

「“世界初の産業用ロボット”といわれるユニメートがアメリカで開発されたのは1960年代。しかし、なかなか普及は進みませんでした。面白かったのは、ユニメートが日本に入って発達し始めた点です。理由は、自動車産業が急成長していた日本において、人が行うには過酷な作業が多数あったこと、そして、大量の数をこなさなければならなかったこと。2つの課題に対応するものとして、産業用ロボットが当てはまったのです」

それから日本では産業用ロボットの国産化が進み、1980年代には世界の先頭に。以降も国内の重要な産業としてあり続け、国も後押しする機会が多かったという。

「今後、この分野における日本の強みを考えるとすれば、いち早く少子高齢化が進む中で介護ロボットの開発は有利な環境になるでしょう。ただし、先ほど言ったように介護作業にロボットを入れるのは簡単ではない。となると、たくさんある介護作業の中でどの部分をロボットで代替すればビジネスになるか見極め、そこに当てはまる単機能ロボットを開発することが求められます」

つまり、単純に開発技術を高めるだけでなく、介護の作業一つひとつを並べて、どの部分ならビジネスとして採算が取れるか、どうすれば運用可能かを考える、プロダクトの設計やデザインが重要になるという。

さらに、日本に限らずこの分野全体の未来も考えたい。これからのロボティクスの発展において、やはり「AI」は外せないキーワードだと中嶋氏は言う。

「AIの技術を取り入れる流れは間違いないでしょう。ロボットの機能は同じでも、環境に応じてどうすれば良いか考える知能が加わればロボットの活用は広がります。そのためには、センサーで環境を認識しAIで判断することが重要になってきます」

そしてもう1つ、さまざまな業界でロボットの活用が広がるかどうかを考える上で、中嶋氏は「移動」の機能もカギになると考える。

「移動してサービスを行うロボットは活用シーンの次元が1つ増えるので、ニーズを伴います。宅配ロボットやドローンも『移動』の要素がありますよね。ロボットが移動してサービスを実現する。その形が何かを考えることが大切かもしれません」

徐々に熱を帯びるロボティクス・ドローンの領域。これらは今後、どのように活用が進むのか。あるいは、すでに進んでいるのはどんな形なのか。次回以降、ロボティクス・ドローン関連の企業に取材し、その詳細を確かめていきたい。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2022年11月現在の情報です

提供元「東証マネ部!」

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