米国株式市場では、AI関連銘柄を中心にした上昇基調が続いてきましたが、足元ではやや神経質な値動きも目立ち始めています。
先週末には、強い雇用統計を受けて米国景気の底堅さが確認される一方、インフレ再燃や利上げへの警戒が高まり、半導体株やテクノロジー株を中心に売りが出ました。その後は、AI半導体株を中心に買い戻しも入り、AIインフラ需要への期待が根強いことも確認されています。
つまり、相場の方向感としては、AI関連投資への期待が残る一方で、金利上昇リスクが株価の上値を抑える構図です。5月の段階でも「AI相場と金利上昇の綱引き」と整理しましたが、6月に入ってもこの構図は続いているとみています。
特に注目したいのは、米金利の見通しです。先物市場では、年内の米国利上げ見通しを7割から8割程度織り込む動きも出ており、これまでの「利下げ待ち」の相場から、再び「利上げリスク」を意識する相場へと変わりつつあります。
今週は、CPIやPPIをはじめとする物価関連指標、消費者センチメントを示す経済指標が続きます。さらに来週6月18日のFOMCでは、ウォーシュ新議長による声明文や会見に注目が集まります。インフレ指標やFOMCの表現次第では、株式市場の値動きがさらに大きくなる可能性があります。
また、6月12日頃に予定されているスペースXの上場も重要なイベントです。スペースXは、宇宙、衛星通信、防衛、スターリンク、さらにはイーロン・マスク氏のAI関連事業との接点も意識される企業です。上場初日の値動きは、単なるIPOの成否だけでなく、現在の米国株市場にどの程度リスクマネーが残っているのかを測る材料になる可能性があります。
今年は、スペースXに続き、オープンAIやアンソロピックといった生成AI企業の上場も視野に入っています。大型IPOが増えることは、投資家に新たな成長投資の選択肢を与える一方で、市場から資金を吸収するイベントにもなります。
メタやアルファベットのような巨大テック企業も、AIインフラ投資やデータセンター投資を背景に早めの資金調達を進めています。大型テクノロジー企業が市場のリスクマネーを吸い上げる中、今後は、企業の資金調達力も株価の成否を分ける要素として重要になってくると想定されます。
現在は市場の理解がだいぶ進み、AIはソフトウェアだけで完結するテーマではなく、半導体、クラウド、メモリー、ネットワーク、電力、冷却、データセンターまで含む、非常に資本集約的なテーマになることが市場・投資家の前提になりました。
今後は、AI投資の規模そのものよりも、その投資をどれだけ早く売上、利益、キャッシュフローへ結びつけられるかをより厳しく見ることになると考えられます。今の株式市場において、より大切なのはバランス感覚です。
前を見るだけでなく、過熱感への警戒も必要です。バンク・オブ・アメリカは、先週末、弱気相場入り前に点灯しやすいシグナルが複数出ているとして、投資家に利益確定を促しました。特に、銘柄の上位・下位パフォーマンスの格差、高PER銘柄への資金集中、S&P500の割高感などが警戒材料として挙げられています。
もちろん、米国株市場全体がすぐに崩れるという意味ではありません。ただし、指数全体を無条件に追いかける局面ではなく、企業業績、キャッシュフロー、設備投資負担、バリュエーションを確認しながら、より丁寧に銘柄を選ぶ必要があり、さらにいうと、想定される市場の揺れを見据えて、いかにそれを収益に変えるのか、冷静かつ最新動向を踏まえた戦略立案ができれば強いです。
こうした相場環境では、単にAI関連株を買うだけでは十分ではありません。
重要なのは、成長テーマに乗ることと、短期的な下振れに備えることを両立させることです。AIインフラへの投資は続いており、企業のAI活用も実験段階から本番運用へ進んでいます。一方で、金利上昇、インフレ再燃、原油価格、中東情勢、大型IPO、資金調達、バリュエーションの高さなど、株式市場を揺らす材料も増えています。
そのため、ここからの投資では、銘柄選別がより重要になりますが、それぞれの銘柄で『安く買って高く売る』ことを目指し、当て続けることは極めて困難です。同じ内容の情報が出たとしても、時として売られ、時として買われるのが株式市場の常だからです。
だからこそ、分散投資の実践が重要となります。AIを動かすには、計算能力、データ、通信、電力、冷却、防衛・宇宙インフラまで必要です。AI普及のボトルネックをどの企業が解決しているのか、という視点で投資機会を整理することが大切だと考えています。(ご参考 志村式ABCD分散投資の考え方)
また、今後注目が高まるであろう量子コンピューターについて、6月1日の日経ネクストで解説してきました。(TVerにて現在無料でご覧いただけます)
分散投資の考え方を含め、次回6月18日(木)20時から開催予定のウィブル証券オンラインセミナーでも、最新の株式市場動向についてお話しする予定です。FOMC、スペースX上場後の市場反応を踏まえた、保守的なオプション戦略について解説していきたいと考えています。ぜひご参加ください!
前回5月のセミナー でお送りしたエヌビディア(NVDA)やロッキード・マーチン(LMT)のシミュレーション事例については、現在はいずれも程よいOTM(アウトオブザマネー)の状態で、もちろん楽観は禁物ですが、現在は『利益を待つ』静観の状態です。オプション取引は、このように『何もしない時間』も収益に変えられる点が大きな魅力です。
また、円安傾向が継続していますが、オプション取引の証拠金については、ウィブル証券が提供するMoneybull の機能を活用し、米ドル金利を受け取ることで、全体の収益機会を補完する考え方もあります。
エヌビディア(NVDA)の次回決算発表は8月下旬のため、6月・7月は、同銘柄について『下がれば買い、下がらなくとも現金収入を得る』戦略や、下がって買うことになったとしても、下値のリスクを限定的にするための『スプレッド取引』が機能しやすい環境が継続するかもしれません。
同銘柄は参加者が多く、仮に取引で建てたオプションのポジションの居心地が悪くなった際には、好みのポジションに組み替えることが、他の銘柄よりも容易にできるのも特徴の一つです。
また、市場で人気化しているマイクロン(MU)ですが、値動きに2倍のレバレッジをかけた、グラナイトシェアーズ 2x Long MU Daily ETF(MULL)を活用して保守的かつ柔軟なリターン戦略を組むことも可能です。
(2倍レバレッジETFは、日次の値動きが大きくなりやすく、保有期間や相場変動によって想定以上に損益がぶれる可能性があります。そのため、いかに保守的に構えるかが重要な視点となります。)
このほかにも新たなETFが多く出ており、投資家がとり得る選択肢が増えています。オプションを活用して、自分好みの期間で、適切にリスク・リターンを取りやすくなってきましたので、是非、最新の動向を踏まえご活用いただくと、この先10年20年と成果を上げ続けるスキルに繋がると考えられます。
株価の方向を一つに決め打ちするのではなく、相場の揺れそのものをどう収益機会に変えるか。今後の米国株投資では、この視点がますます重要になると考えています。
志村暢彦