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「日本型モバイルオーダー」を突き詰めて誕生したトレタO/X

導入で客単価7%アップ

(※本記事は2022年11月12日に「東証マネ部!」で公開された記事の転載です)‌

さまざまな業界の新しい動きを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。この連載では、コロナ禍に起きたビジネスやサービスの変化を追ってきた。

今回の記事で取り上げるのは、コロナ禍で見かける機会が多くなった飲食店のモバイルオーダーだ。モバイルオーダーとは、注文や支払いを自分のスマホで完結できるシステム。その代表的なサービスの1つが「トレタO/X」である。

モバイルオーダーというと、デジタルによって注文を「効率化する」というイメージが強いが、トレタO/Xは、モバイルオーダーによってお店のこだわりをより深く伝えることが最大の目的だという。そして、それこそが「日本型モバイルオーダー」だと考える。

詳しいサービスの中身や「日本型モバイルオーダー」の意味について、このサービスを開発したトレタ 代表取締役 CEOの中村仁氏に話を聞いた。

先行する中国・アメリカとは真逆の発想で生まれたシステム

トレタO/Xは、2021年7月から提供を開始したシステム。現在、約100店舗に導入されているという。

中村氏にこのシステムの概要を聞くと、ひと言で「日本型モバイルオーダー」だと表現する。どういった意味なのか。それを説明するには、まずモバイルオーダーが世界で普及してきた流れを追うのがわかりやすいとのこと。

「モバイルオーダーがいち早く登場したのは中国です。スマホを使い、注文から決済まで行うシステムは2007年頃に出てきました。一方、キオスク端末などを使ったデジタルオーダーについては、アメリカでも早い時期に登場。いずれも、大きな目的は効率化です。しかし日本では、2国に比べてこういったシステムの普及が進まなかったといえます。理由として大きいのは文化的背景でしょう」

中村氏の言う「文化的背景」とはこういうものだ。中国やアメリカは飲食店の接客サービスに質の高さを求めないことが多く、であれば、それを機械に代替させた方が顧客にとってもお店にとっても快適かつ効率的だった。

一方、日本は“おもてなし”という言葉があるように、接客や人が介在することが飲食店の付加価値の1つになっている。そのため「効率化をメインにした海外製のモバイルオーダーを日本にそのまま持ってくると、飲食店の価値が失われてしまうと考える店舗が多く、日本では導入が進まなかった」と中村氏は考える。これはコロナ前の話だ。

「とはいえ、日本では人手不足が進んでいますし、外国人労働者の増加も予想されます。この領域のニーズが高くなる可能性は高いでしょう。その見立てから、私たちは2019年頃より『日本型モバイルオーダー』を研究してきました」

さらに2020年、新型コロナが到来。モバイルオーダーの需要が一気に高まった。その中で2021年7月にリリースしたのがトレタO/Xである。

「効率化をメインにした海外製とは真逆のコンセプトを掲げ、飲食店のこだわりや魅力、世界観をより深く伝えられるものを作りました。それが『日本型モバイルオーダー』です。たとえば飲食店の料理に対するこだわりは、紙のメニューでは伝えきれないケースがあります。トレタO/Xでは、動画を駆使したり、情報量を増やしたりすることで、お店のこだわりをリッチに伝えています」

もちろんメニューをデジタル化することで、効率化や省力化というメリットも生まれる。しかし、それはあくまで副次的なメリットであり、「私たちが目指すのは、注文という体験をワクワクさせることです」と中村氏は言い切る。

紙のメニューにはなかった「シズル感を伝える演出」

こうして作られたトレタO/Xの大きな特徴は、デザインカスタマイズの自由度がきわめて高いこと。同じシステムを使いながら、店ごとに全く違った雰囲気のメニューにできる。そして、お店のこだわりをたっぷり伝える工夫が施されている。

実際に見てみよう。たとえば塚田農場のメニューでは動画がふんだんに使われており、シズル感のあるシーンが用意されている。これはもちろん紙のメニューではできなかったことだ。

「動画のほか、塚田農場では店員の方々による接客を大切にしているので、多くのメニューにスタッフの方の顔写真とコメントを載せています。各料理のこだわりも記し、メニューへの興味が高まる形に。そのほか、料理とお酒のおすすめのペアリングも紹介されています」

ビアレストランの「YONA YONA BEER WORKS」でも、トレタO/Xが導入されている。こちらでは、注文した後にお店からのメッセージが出る仕様になっているが、これは「オーダーしたときの気持ち良さを演出したいという想いから生まれました」と中村氏。

こういったメニューの設計や仕掛けは、各店と話し合いながら構築していくという。

もう1つの面白い事例が「焼鳥IPPON」だ。2021年9月にオープンしたこの店舗は、トレタも設計時から携わり、「デジタルをベースにした新しい飲食店」を目指して誕生。メニューにはトレタO/Xが使われ、特徴的な機能が設けられている。

その最たるものが、来店客がメニューをカスタマイズできる機能だ。たとえば「わたしのサラダ」や「わたしのレモンサワー」といったメニューがあり、サラダならトッピングやドレッシングなどを選びながら、自分好みのサラダを注文できる。レモンサワーも、アルコールの濃さやレモンの種類を選べるのだ。

そのほか、時間帯によってドリンクの価格が変わる「ダイナミックプライシング」も導入。人の少ない曜日・時間帯にはドリンクを安くするなどの設定ができる。

客単価や注文回数はアップ。料理への満足度も上がった

トレタO/Xの導入により、明確な“効果”も出ているという。客単価は平均7%上がり、注文回数も30%アップした。スマホからオーダーできるので注文の取りこぼしがなくなり、また、メニューが魅力的になったことも大きいだろう。「メニューの閲覧時間も平均2倍になっています」という。

「もう1つ重要な効果として、モバイルオーダーにより食事の傾向も変わることがわかっています。従来の人を介した注文は、1回でまとめて何品も注文することが多いため、まとめて料理が提供されてしまうので食べきれずに料理が冷めてしまうなど、食べ残しを生む要因にもなっていました。モバイルオーダーは細かく何度も注文しやすくなるので、まとめ注文がなくなります。その結果お料理も一品ずつ提供できるようになり、よりおいしい状態で料理を食べていただけるようになります。その結果、食べ残しも減るというデータも出ています。オーダーが自動化されるだけでなく、お客さまのお料理に対する満足度も上がっていると考えています」

そのほかの効果として、やはり効率化も実現できており、塚田農場では人時生産性が12%向上。コストに占める人件費率も32%から19%に圧縮された。

「さらなる今後のメリットとして、デジタルにしたことでデータも溜まります。それらを分析し、改善や次のメニューを考えていくことも可能。ECサイトで行われてきたデータに基づいた最適化を、飲食店のメニューでも行えるのです」

海外とは違う「日本型モバイルオーダー」を目指して作られたトレタO/X。現状の効果を見ても、このサービスが飲食店での体験を魅力的にしているのは確かだろう。コロナ禍で逆境を経験した飲食業界だが、こういった事例を見ると、この期間が“進化”を後押ししたのは明らかだ。

(取材・文/有井太郎)

※記事の内容は2022年10月現在の情報です

提供元「東証マネ部!」

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