2025年7月14日の取引時間中にビットコインは12万米ドル(以下「ドル」)を超えた。トランプ米国大統領の暗号資産に対するポジティブな姿勢や、株高、オルタナティブ資産(代替資産)としての存在感の増大、暗号資産ETFの活況などもあいまって、ビットコインのモメンタムは勢いを失ってはいない。
もっとも、2025年7月現在、日本ではビットコインなど暗号資産への投資は個別の仮想通貨取引所を利用するほかなく(日本にはまだ暗号資産ETFは存在しない)、米国の暗号資産ETFは、日本在住者は取引できないなど、米国に比べて、暗号資産の投資環境は整っていない。
ただビットコインなど暗号資産は、その価値の裏付けがなく、価格変動も大きいことから、ハイリスクな投資対象であることは確かだ。
そこで本コラムでは、ビットコインに間接的に投資する方法として、ビットコイン保有企業のコールオプションを買うという投資法を解説する。コールオプションならば、低資金でリスクを抑えた投資が可能だ。
【図表1】ストラテジー社(MSTR)とビットコインETF(IBIT)比較

出所:Webulldesktop
図表1はビットコインETF(IBIT赤)とストラテジー社(MSTR:旧マイクロストラテジー社)の比較チャートである。高い相関性があることがわかるだろう。ストラテジー社は、その経営戦略の中核にビットコイン保有戦略を位置付けており、2025年7月29日現在、ストラテジー社が保有するビットコインは合計607,770BTC(約9兆円 1ドル=148円)である(https://www.strategy.com/ )。
つまりビットコインの価格に株価が連動しやすいということだ。ストラテジー社の株を買えば、間接的にビットコインに投資ができるというわけだ。しかもストラテジー社の株に投資すれば日本でも株式扱いでビットコインに投資できることになる。
しかしながら、ビットコインのリスクに加えて、ストラテジー社固有のリスクも抱えることになることに注意が必要だ。またストラテジー社の株価は2025年7月29日現在、403.80ドルであり、100株だと4万ドルを超える投資だ。
【図表2】ストラテジー社(MSTR)株価チャート

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しかも、株価は2024年後半に一時540ドルを超えるところから、2025年上半期にかけて一気に半分以下、240ドルを割り込む展開になるなど、非常にボラティリティ(リスク)が高い。
このような銘柄にはコールオプションだ。コールオプションなら、株式よりも少額で、損失を限定した取引が可能である。
そこで、関税ショック時に逆張り的にコールを買ってみることにしよう(拙稿「ショック急落はチャンス⁈落ちてくるナイフをつかむ逆張りエヌビディアのコール買い」 も参照されたい)。
【図表3】ストラテジー社(MSTR)2025年4月8日時点の7月18日満期オプション価格表

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満期は7月18日を選んでみる。500ドルまでは戻らないかもしれないが400ドルは堅いと考えて、権利行使価格は350ドルあたりにしてみよう。買い気配18.50ドル、売り気配19.40ドルなので、今すぐに買いたければ19.40ドルで買うことになるが、一旦、買い気配と売り気配の中値18.95ドルに注文をだしてみるとよい。
18.50ドルでは売りたくないという売り手が18.95ドルならば売ってもよいということで、その指値に売りをぶつけてくれる可能性もある。ここでは、18.95ドルで買えたとしよう。
【図表4】MSTR7/19C350の満期損益図

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オプションは1枚当たり100株相当を取引する。よってC350への投資金額は1,895ドルになる。一方、このタイミングでMSTRを100株買うならば24,000ドル程度が必要だ。C350なら10分の1以下である。
しかもこの1,895ドルが最大損失額だ。もし株価がここからさらに半分になるようなことがあっても、1,895ドルを超えて損が拡大することはない。小資金で損失限定。株価が上がれば、C350の価値も上がる。株価が損益分岐点である368.95ドルを超えてくれば利益になる。
株価が目標の400ドル程度まで上がってくれば、3,000ドルを超える利益になる可能性がある。500ドルなら13,000ドルの利益だ。
さて、このC350の価格が満期までにどのように変化したのかをみてみよう。
【図表5】株価の推移とC350の価格変化

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C350の価格変化

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C350の価格はスタート時18.95ドル。株価が400ドルを回復した5月8日(株価414.77ドル)、このC350は93.05ドルになっていた。投下資金が5倍になった計算だ。この時点で売却すれば、実に74.1ドル(7,410ドル)の利益である。そして、ビットコインが一時、12万ドルを超えた7月14日、ストラテジー社の株価は451.02ドル、そしてC350は101.70ドルであった。ここで売却できれば8,275ドルの利益を手にすることができた※。
もちろん、株価が損益分岐点を超えて上昇しなければ負けである。しかし、小資金で、損失額も少額に限定できるコールオプションは、ビットコインのようなボラティリティの高いものに対する一つの投資法として選択肢にはならないだろうか。
株式会社M&F Asset Architect
(オプショントレード普及協会)
代表取締役 守屋史章
※なお、満期も近くなったこのタイミングでC350を権利行使すれば、450ドルを超えている株を350ドルで購入できる。一旦35,000ドルを用意する必要はあるが、権利を行使して350ドルで株を取得し、即、市場で仮に450ドル前後で売却できたならば100ドル(×100=10,000ドル)程度の利益が出ることになる。権利行使によりオプションを利用して株を売買した場合には、すべて株式の譲渡損益として計算することになっている。C350を買ったときに支払った1,895ドルは株式購入コストとして10,000ドルの売却益から控除できるので、最終的には8,105ドルの株式譲渡益ということになる。